前編ではイベントナースとツアーナースについてご紹介しました
まだまだ自由度の高い仕事があります。
今回は、欠員が出ない限りなかなか募集はかかりませんが、とても人気のある2つの仕事を紹介します。
魅力的な内容なので倍率は高いです。
しかし、気になる人はチャレンジしてみてください!
看護師の資格を活かして、世界中を旅したり、遊園地で楽しめたりできますよ。
シップナース
シップナースとは、豪華客船(大型クルーズ船)に乗り、船内にあるメディカルセンター(医務室)で働く看護師のことです。
旅行という点ではツアーナースとシップナースも同じなのに、どこが違うの? と感じた人がいるかもしれません。
決定的に異なるのは「医師の有無」と「期間」です。
シップナースが働く豪華客船には医師が1~2人、ナースが1~4人常駐します(医療従事者の人数は客船の大きさによって変わる、1隻にシップナース1人が基本)。
期間は、短かければ3日~1週間、長ければ2~3週間船内生活です。
もちろん寄港先で陸へ降りることはありますが、そこからまた船の旅。
海外旅行の場合、4か月仕事に就いたら、2か月まとめて休むサイクルになっているようです。
仕事は、医師が船内に居るので診察介助が主です。
乗組員の健康管理を行いながら、乗客の体調不良などの応急処置を施します。
症状として多いのは船酔いですが、怪我や骨折、食あたり、持病の悪化などがあります。
薬剤師は乗船していませんので、薬の管理も医師と看護師の仕事に含まれます。
仕事は日中の対応だけでなく、24時間体制。
オンコール(いつでも出動要請に応えられるように連絡の取れる状態でいること)で、乗客のもとへすぐ駆け付けます。
従って、睡眠時間を削られることも覚悟してください。
医師はいますが、数百人も乗船する豪華客船の場合、シップナースが自分で判断して処置を行うことも沢山あります。
客船には最新の設備が整ってはいません。
もちろん、ある程度の医療機器は搭載されていますが、病院内の設備を想像しているならば違います。
足りない備品も出てくるので、船内にあるものを駆使して備品を作っていく機転も必要です。
つまり応用力を求められるのです。
初動の素早さ、臨機応変さ、高い経験値といったことなどから、救急外来や集中治療室で勤めてきた看護師が採用される傾向があります。
シップナースとして大変なことは、2つあります。
1つは自分自身の体調管理。
体調を崩してしまうと、乗組員や乗客に迷惑をかけてしまいます。
長期の航行ならばなおさら、自身の体調に気を付けて日々を過ごさなければいけません。
シップナースが2人以上乗船の時は良いのですが、1人だけの時は、体調を崩せないと心得ましょう。
もう1つは、語学力。
海外へ旅する豪華客船には多くの国々の人が乗っています。
どのように体調が悪いのか、詳しく知る必要があります。
ですから、日常会話レベル以上の語学力が必要です。
緊急時には各国の病院と連絡を取ることもあるので、意思の疎通ができて、現場医療でも使える英語力が求められます。
二か国以上の言葉を話せる看護師は、採用される可能性が高くなります。
特に中国語、スペイン語、フランス語の需要があるようです。
現在、日本の有名な豪華客船は、郵船クルーズの「飛鳥Ⅱ」(乗客定員872名)、商船三井客船の「にっぽん丸」(449名)、日本クルーズ客船の「ぱしふぃっくびいなす」(620名)、せとうちクルーズの「ガンツウ」(38名)、カーニバル・ジャパンの「ダイヤモンド・プリンセス」(2706名)などです。
海外ではアメリカの「プリンセス・クルーズ」「ロイヤルカリビアンインターナショナル」「キュナードライン」「カーニバルクルーズライン」「セレブリティクルーズ」、イタリアの「コスタクルーズ」、スイスの「MSCクルーズ」などがあります。
働き方としては、国内・海外の運航会社の正社員・契約社員として採用されるか、クルーズ会社と契約するかの2つです。
運航会社の求人は、欠員が出た際に募集がかかる程度ですので、とても狭き門です。
いつでも公募という訳ではありませんから、直接本社に問い合わせるかHPを頻繁にチェックしてください。
たとえ今は募集がなくても、いずれ募集があることを見越して、救急医療や総合医療などで働き、経験値や技術スキルを上げていきましょう。
求人に関しては、ほぼ条件が付いています。
「看護師経験が3~5年以上」「1年以上の救命救急室、集中治療室、心臓系分野、いずれかの臨床経験者」「船舶衛星管理者の資格保持者」「犯罪歴なし」など。
海外の会社では、「ACLS認定」「BSL認定」のある者、「2か国語以上」話せる者といった具合です。
ナースプラクティショナー(診療看護師。看護職でありながら医師サイドにたった診療を一定の制限で行える国が認めた新たな制度上の看護師)の資格を持っているとさらに採用されやすいようです。
いずれにしても、目指す会社の応募概要をしっかり読みましょう。
国内のクルーズ会社との契約も狭き門です。
こちらは2~4日といった短めの乗船期間が一般的のようです。
契約しても、毎日仕事があるとは限りません。
とても不安定な働き方になります。
もうひとつの手立ては、看護師の転職エージェントに登録し、担当者に求人が出たらすぐ教えて欲しいと頼んでおくことです。
貨物船や貨客船にもシップナースは乗船するので、豪華客船でなくてもOKの人は、併せて伝えておくといいでしょう。
テーマパークナース
テーマパークナースとは、テーマパークや遊園地、リゾート・観光地にあるレジャー施設などの救護室(医務室)で待機し、気分が悪くなったり、怪我をしたりした入場者に処置を施す看護師のことです。
また施設スタッフの健康管理・健康指導も行います。
救護室には、医師&薬剤師はいません。
テーマパークナースは、体温測定、血圧測定、バイタルチェックのほか、聴診器を扱うといった基本看護ができればOKです。
救護室の備品は、絆創膏、消毒液、包帯などで、学校の保健室をイメージしてもらえればいいと思います。
救護室では治療を行いませんから高度な医療スキルは求められていません。
用意している薬は市販薬。
薬剤の免許がない看護師ですから「この薬を服用ください」とは言えないため、薬の説明を行い、判断は入場者に委ねます。
同じ効果を謳っている薬ならば、どこがどう異なるのかは説明しますが、最終的には入場者に決めてもらいます。
テーマパークナースに求められる能力は3つ。
「判断力」「コミュニケーション力」「事務力」です。
判断力とは、怪我や体調を崩している人の様子を見て、応急処置でいいのか、救急搬送が必要か、といった症状を見極める力です。
救護室にはベッドが用意されており、体調が落ち着くまでそこで休んでもらうことができます。
一方、救護室対応で間に合わないと判断した時は、すぐ近くの病院へ連絡をとったり、救急車の要請を行ったりします。
症状によっては、入場者に付き添い、責任をもって病院まで搬送します。
救護室へ来ることができない入場者の場合は、施設スタッフから無線などで容体を聞き、車椅子や救急バッグ、AEDバッグなどを持って現場へ向かいます。
コミュニケーション力とは、怪我や体調を崩している人に対しての接し方です。
大勢の人が集まるテーマパークにおいて、1番求められるスキルと言ってもいいでしょう。
入場者は、楽しむためにチケット代を払い、非日常であるテーマパークや遊園地などに来ています。
その気持ちをナースは十分理解していなくてはいけません。
たとえば、子どもが転んで足を擦りむいたとします。
処置は単純だったとしても、優しく笑顔で対応し、子どもの心も安心させてあげます。
心配そうに見守る保護者に対しても、接遇(おもてなしの心)と、ナースとしてのマナーもわきまえなければいけません。
せっかくの楽しい気持ちが、怪我をきっかけに悲しい思い出にならないように、テーマパークナースには配慮と技量が求められます。
入場者の立場からすると、突然の体調不良や怪我というのは、非常事態です。
テーマパークの救護室に留まる時間が長ければ長いほど「遊ぶ時間が短くなったのだからチケット代を返してほしい」とか「段差に転んで血が出たのだから治療費を払ってほしい」とクレームをつけることがあるようです。
テーマパークナースは、言いがかりに近い言葉を投げかけられたとしても、コミュニケーション力を活かして、嫌な顔も出さず、クレーム処理スタッフへうまく引き継ぎます。
失礼がないように対応するという、看護以外の接客スキルも求められているのです。
事務力は、ワードやエクセルを使えれば問題ありません。
スタッフの健康を管理するための情報を入力したり、薬品やリネンなどの在庫管理を行ったりします。
もちろん入場者の怪我や体調不良の症状や対処なども情報として入力します。
加えて、語学力を求められるところもあります。
大きなテーマパークなどは、大勢の外人観光客が来るからです。
テーマパークで忙しいのは、行楽シーズンとGW、夏休み・冬休みの時期です。
5月~8月、12月~1月は、通常のテーマパークナースのほかに、バイト数名が増員されます(通常の勤務人数はテーマパークによって異なります。基本は1名体制ですが、大規模テーマパークでは数名が常勤しています)。
東京ディズニーリゾート(TDL・TDS)、USJ、富士急ハイランド、サンリオピューロランド、レゴランド・ジャパン、志摩スペイン村、ハウステンボス、スパリゾートハワイアンズなどは、企業のHPで看護師の求人を出すことが多いです。
都道府県ごとに地元で有名なレジャー施設がありますから、気になる人は企業のHPをチェックしてください。
ナースキャストだったり、クルーキャストだったり、イメージに合わせた独自の呼び方で紹介されているところもあります。
応募は、まず登録を行いエントリーします。
その後、書類選考が通れば面接に進む、という手順が多いようです。
採用されたら、トレーニング期間を経て、本格的に仕事がスタートします。
働き方は基本的に、常駐の社員と派遣・非正規雇用の2種類に分けられます。
前者の採用は少ないです。後者は繁忙期に短期雇用(バイトなど)で採用されるケースがあります。
企業によっては働きぶりを見て、正社員になれるところも。
しかし、最後まで正社員の登用はないという企業もありますので、よく調べてから登録しましょう。
もうひとつ、知り合いに紹介してもらうのも、仕事に就ける1つの方法です。
テーマパークナースとして働いているナースの紹介や、救護室以外の部署で働く施設スタッフの紹介といった手立ても有効です。
また、看護師系の転職エージェントに登録し、求人があった時に教えてもらう方法もあります。
非公開求人として扱われることが多いので、エージェントを使って情報を収集する方法もアリです。
求人には、ほぼ条件が付いています。
「土・日を含む5日勤務」「臨床経験3~5年以上」といった具合です。
実務がしっかり出来るかをチェックするほか、面接ではエンターテイメント性を理解しているかを見ているようです。
しっかり対策をたてて望んでください。
まとめ
前編・後編を合わせて、4つの仕事を紹介しました。
自由度の高い仕事はとても魅力的です。
しかし、どんなに真面目に一生懸命に働いたとしても、利用者からのクレームは付きものです。
企業の社員として働けば、何かあっても看護師を守ってくれますが、個人で働く場合は誰も守ってはくれません。
そこで、自分の身を守るために保険に入ってみるのはどうでしょうか?
個人でも加入できる「看護職責任賠償保険」というものがあります。
これは医療事故だけでなく、患者の持ち物の紛失や破損、患者の名誉棄損に対する損害賠償などが保証されます。
「看護職責任賠償保険」は、日本看護協会会員や、日本看護学校協議会共済会会員専用といった公的な保険から、民間の保険会社が提供するものまであります。
掛け金や保証内容が異なりますから、一度チェックしておくといいでしょう。
一度きりの人生です。
看護師資格を活かして、輝きたい場所で思い切り活躍してください。
HCキャリアはあなたを応援しています!