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在職中の診療科が自分に合わない・・・ 未経験の診療科へ転職 GO!【後編】

後編では、緊急性が高く集中力を必要とする診療科を紹介します。

看護師国家資格があれば、あなたも働くことができます。

途中入職者で、しかも未経験の診療科。

本当に働けるの? と不安になるかもしれません。

しかし、中途向けの教育プログラムが組まれていたり、プリセプター(一定期間、先輩看護師とマンツーマンで臨床実践を指導してもらう方法)の年間教育計画に沿って長期的にフォローしてくれたりします。

また向上心があれば、資格取得の支援もあります。

急性期病院(急性疾患または重症患者の治療を24時間体制で行う病院)などで働きたい、学びたいというという気持ちのある人は、ぜひチャレンジしてください。

【診療科の「仕事内容」と「向いている人の傾向」】

「手術室」「救急科」「ICU」の仕事と向いている人の説明をします。

これらの科で働く看護師は、自己研鑽に励み、専門知識や技術を身につけ(前編で紹介した)「認定看護師」や「専門看護師」などの資格を取得していくほか、どんどん関連資格も取っていきます。

常に勉強を行い、スキルアップしていく姿勢を持っています。

◇ 手術室

仕事内容

手術室で働く看護師を手術室看護師と言います。

オペナース、オペ看と呼ぶところもあります。

手術室では、様々な職種がチームとして治療を行います。

その中で、看護師には2つの役割があります。

1つは、器械出し看護師。

術式を理解し、手術前に患者の情報をアセスメントして、必要な器械(道具)を準備します。

手術の進行状況や執刀医の動きから流れを先読みし、迅速に器械を出す直接介助です。

もうひとつは、外回り看護師。

手術にかかわる各職種間の調整役を担います。

手術進行に応じた物品(薬剤や輸血製剤など)の準備。

手術中は麻酔の介助、出血量のチェック、状況に合わせて物品の補充、患者の状態の観察など、手術の外側から幅広くサポートを行う間接介助です。

どちらも緊張状態が長く続き、立ちっぱなしなので、疲労が強い仕事といえます。

向いている人の傾向

人の命を救いたい! 医療の技術を学びたい! という思いが強い人に向いています。

器械出し看護師は、手術中に医師から激しい言葉を投げられることがあるので、タフな精神力と高い集中力のある人が向いています。

患者とは周術期(術前から術後の一連の期間の総称)の一期一会ですから、直接コミュニケーションをとる機会は少ないです。

患者とのコミュニケーションやケアが苦手な人は考えてみるのもいいですね。

しかし医師とは高度なコミュニケーションが必要です。

仕事仲間と上手く信頼関係性を築ける人は、働きやすい職場になるでしょう。

外回り看護師は、知識や技術を学ぶことが好きな人が合っています。トラブルや状況の変化に、臨機応変に対応しなくてはなりません。

そのため、幅広い視野と知識が必要です。

新しい知識を習得することにワクワクし、実践できる人が向いています。

また、外回りの看護師は、手術前・手術後に患者と会い、質問に応えたり、不安を和らげる精神的なケアも行ったりします。

短時間に、関節可動域や神経障害といった情報も患者から集めたり確認したりするので、聞き上手な人! しかもテキパキと動くことの好きな人が合っているでしょう。

◇ 救急科

仕事内容

救急看護師は、ただちに処置が必要な重篤患者へ、蘇生処置や応急処置などを行います。

また医師の救急治療の場において処置介助も行います。

医療行為のほかに、患者の体を清潔に保ったり、体位を整えたり、痛みを和らげたりする生活行動援助や、患者の家族に対する心のケアも行います。

他にも、救急医療チームが円滑に機能するように調整、救急医療物品の配置、一般の人々へ救命救急処置の指導など、多岐に渡ります。

救急看護師はトリアージ(患者の容態や緊急性を確認し、診療や処置の優先順位を決めること)も行います。

高い知識と経験、精神力が必要とされる仕事です。

救急看護師は救急医療施設で働きます。

日本の救急医療施設は24時間365日救急診療ができるようになっており、患者の重症度に応じて、一次、二次、三次と段階的な整備がされています。

三次は、救命救急センターと呼ばれるところで、一次、二次救急施設では対応困難な重傷者を受け入れています。

施設で働く以外にも救急看護師の働く場があります。

ドクターヘリに乗るフライトナース、ドクターカーに乗るカーナース、災害時に被災者へ救急活動を行う救急看護師、海外の災害現場に派遣される救急看護師などです。

向いている人の傾向

体力・精神力があり、常に平常心を保てる人! が向いています。

患者の命が危機の中、緊張状態が続く現場はとてもハードです。

その上スピードも求められるので、常に動きまわれる体力・知力・技術が必要。

また、非常に慌ただしい時でも、パニックになることなく冷静に構えられる平常心を持っていなくてはいけません。

そのようなハイパー看護師にはなれないよ・・・と思うかもしれませんが、現在働いている救急看護師は、さまざまな経験を経て現在活躍しています。

最初から凄腕だったわけではありません。

大切なのは志です。

もうひとつ、仕事と割り切れる人! も合っています。

救急看護の現場では、助けることができる命もありますが、救えない命もあります。

患者のことをひきずり続けていると精神的な負荷がかかります。

また一秒を争う救急の現場では、医師や先輩から厳しい言葉が飛び交います。

チームで働くのですから“厳しいことがあるのも当たり前”と受け止めて、仕事が終わった時に一切引きずらないで普通に過ごせる人、オンとオフの切り替えスイッチを持っている人、が向いています。

◇ ICU

ICU(集中治療室)は、手術を終えた患者や生命に危機がある患者を受け入れているところです。

そのため、ベッドサイドには生体反応をみるモニターや人工呼吸器など多くの医療機器が設置されています。

ICU看護師の役割は、チーム医療をまとめること。

というのも、ICUには医師、薬剤師、臨床工学技士、医薬品管理責任者、セラピストなど多くの職種が関わっています。

患者の状態が最良に保てるように、ICU看護師がチームをサポートするのです。

現在は、医学の進歩にともない、CCU(冠疾患集中治療室)、SCU(脳卒中集中治療室)、NCU(脳神経外科集中治療室)、KICU(腎疾患集中治療室)、RICU(呼吸器疾患集中治療室)、HCU(高度治療室)、SICU(外科系集中治療室)、NICU(新生児集中治療室)、MFICU(母体・胎児集中治療室)といった専門性に特化した集中治療室が増えていますが、ICUは疾患を限定せずに生命の危機がある患者すべてを受け入れています。

ですからICU看護師は、患者の臨床状態とモニターの数値を即座に病態的にアセスメントする能力や技術を持っています。

ICU看護師は、その能力の高さから、ミニ・ドクターと呼ばれることもあります。

そして、もう一つ役割があります。

それは患者の家族の支援。

患者の命が危ない状態のとき、その家族にかかるストレスも相当なものです。

不安な感情をICU看護師にぶつけてくることがあります。

その感情も家族間で異なっていたり、日々の中で変わっていったりします。

ICUでは、面会時間や人数の制限も決められているところが多いです。

つまり、ICU看護師は患者の容態を説明しつつ、家族の精神状態をも把握し、全面的に支援するスタンスを心掛けることが重要です。

向いている人の傾向

観察力のある人です。

患者とは、言語的なコミュニケーションの難しい場合が多いです。

ですから顔色、手や胸の動き、表情、息づかいなどから、声なき声を聞き、見えないものを見る看護が得意な人が向いています。

微細な変化に気づける観察力は必須といえます。

もうひとつ、人を支えたいと強く思える人! も合っています。

協調性を持ってチームを支えていくのがICU看護師。

患者の状態が安定し一般病棟へ移っていくときに感じる喜びは格別ですが、死に立ち会うことも少なくありません。

感情が不安定になりますから、看護仲間を支えたり、仲間から支えられたりすることがあります。

毎日いろいろな気持ちが入り混じる中、患者、家族、仕事仲間すべての人々を元気づけたい、支えたいと思える人が合っているでしょう。

最後に、ICUは医療機器が進歩していきますから、最先端機器の勉強が好きな人も適しています。

設備機器の学習だけでなく、セミナーや研修などへ積極的に参加し、病態の理解を深めること、貪欲に学びとることが性に合っている人は、相性がピッタリです。

【持っていると役に立つ資格】

前編で紹介した「認定看護師」や「専門看護師」のほかに、どのような資格があるのか紹介します(取得するには条件や実績、試験など細かな条件あり)。

ここでは簡易に説明しますので、目安としてお役立てください。

 

・「BLS」(一次救命処置)

日本ACLS協会が認定する資格。トレーニングの参加と実技試験、筆記試験がある。心肺停止後または呼吸停止に対する、心肺蘇生の基礎を学ぶ。

 

・「ACLS」(二次心肺蘇生法)

日本ACLS協会が認定する資格。トレーニングの参加と実技試験、筆記試験がある。蘇生現場や医療関係者が行う高度な救命処置。気道確保や人工呼吸などの基本とともに、高濃度酸素投与、静脈路確保など、また薬物投与を主体とした手技を学ぶ。

 

・「JPTEC」(病院前外傷教育プログラム)

日本救急医学会の下部組織として発足したJPTEC協議会が認定する資格。実技試験と筆記試験。外傷における初療で行うべき観察と処置、迅速な搬送の実践などを学ぶ。

 

・「3学会合同呼吸療法認定士」

一般社団法人日本胸部外科学会・一般社団法人日本呼吸器学会・公益社団法人日本麻酔科学会が合同で創設した認定資格。講習会に受講し、かつ筆記試験に合格した者に与えられる。呼吸理学療法や、吸入療法、酸素療法などの的確な呼吸療法の実施と、その機器の管理などを学ぶ。

 

・「NST専門療法士」(栄養サポート)

日本静脈経腸栄養学会が認定する資格。セミナーや学会に参加し30単位の取得、40時間の実地修練、NST専門療法士受験必須セミナーの参加の上、試験を受ける。チーム医療のメディカルスタッフとして栄養療法を行える。

 

【まとめ】

さらに学びたい気持ちのある人は「医療環境管理士」「リンパ浮腫療法士」「禁煙支援士」「人工心臓管理技術認定士」などの資格もチェックしてみてください。

面白いところでは、ドクターヘリのフライトナースになるための条件が変わっています。

看護経験が5年以上+救命救急に関する資格を持っているというほかに、第三級陸上特殊無線技士の資格を取得し、日本航空医療学会が主催する講習会を受講すること、となっています・・・大変そうですね。

いずれの資格も、本気で取りにいくならば、計画を立てて具体的に取りかかりましょう。

経験年数も費用も必要で、講習受講なども必須だったりしますから、最後までやりきる気持ちが大事です。

とかく転職には不安が付きものですが、未経験の診療科で働きたい、というその気持を大切にしてください。

そして自分の適正な居場所で再スタートをしましょう。

ミエタイム HCキャリアは前を向いて生きる看護師を応援していきます!