前編では、今働いている診療科がしっくりこない、新しい診療科で働いてみたいという時の、転職での心構えを紹介しました。
とはいえ、正直なところ自分に何科がピッタリくるのか判断しにくいものですね。
そこで中編では、診療科別に、具体的な仕事内容と向いている人の傾向を紹介します。
すべてがこの通りではありませんが、目安として参考にしてください。
【診療科の「仕事内容」と「向いている人の傾向」】
◇ 内科
仕事内容
内科といっても、消化器科、呼吸器科、循環器科、神経科、内分泌科、アレルギー科、血液内科などたくさんの診療科があります。
内科の外来では、検温や薬剤の管理と投薬、検査や治療についての説明など、患者が安全に治療を受けられるように気を配ります。
病棟では、食事・排泄・清潔への援助や、ソーシャルワーカーとの連絡などを行います。
また内服管理だけでなく、食生活の改善をアドバイスしたり、生活習慣の見直しを促したりもします。
患者の家族との交わりも多くなります。
循環器科では心電図の操作、観察、管理。
消化器科では人工肛門や胃ろうのケアと指導。
呼吸器科では気管支鏡検査の介助や胸腔ドレーンの観察・管理などを行います。
向いている人の傾向
患者やそのご家族とじっくり向き合う看護をしたい人に向いています。
ご存知の通り、内科は薬剤による治療がメインです。
患者は治るまで不安になりますから、話をじっくり聞いて欲しいと望みます。
コミュニケーションスキルが高い看護師ほど輝ける科といえるでしょう。
また認知症の患者は、言葉でうまく伝えられないことが多いので、少しの変化にも気づける洞察力が求められます。
観察眼に自信のある人も向いているでしょう。
◇ 外科
仕事内容
一般外科のほかに専門分科(脳神経外科、胸部外科、心臓血管外科など)約20種類も細かく診療科があります。
一般外科では、緊急度の高い患者が運ばれてくることがたびたびあり、看護師が優先度を判断することもあります。
ガーゼ・包帯・消毒液の準備や、患者の診察がスムーズに行われるように様々なところへ配慮します。
病棟では、バイタルサインの確認をはじめ手術前の処置や検温、指示薬の投与。
手術日には手術室への送り出し、お迎えをはじめ家族への説明などを行います。
急変があれば迅速な対応も求められます。
患者やそのご家族が抱く不安をケアすることも大事な仕事です。
脳神経外科では、脳槽ドレーンの観察、管理など。
整形外科では、装具のケア、ギブスや包帯の交換などを行います。
向いている人の傾向
責任感が強く、仕事をテキパキとこなすことが好きだという人に向いています。
患者は血を流して運ばれてきたり、症状が急変したりしますから、目の前で起きている事態を冷静に対処することが大切。
それを遣り甲斐に感じられる人は、外科が合っています。
ただし、常に緊張状態では身がもちませんから、仕事とプライベートを切り替えられる性格だとなお良いですね。
外科は手術が多く、患者やその家族への説明や精神的ケアも大事な仕事です。
理路整然と分かりやすく説明できる人も貴重な存在です。
◇ 産婦人科
仕事内容
妊娠から出産までサポートする産科と、女性特有の疾患を扱う婦人科があります。
産科の外来は、妊婦検診や産後の検診の介助、採血などを行います。
病棟では、検温や点滴の管理、清潔ケアなどを行い、出産時は医師や助産師の介助を務めます。
産後は母親と新生児の検温や採血、沐浴、授乳指導を行うほか、退院後の生活指導も行います。
婦人科の外来は、がん検診などの診察や処置の介助です。
病棟では、検温や処置の介助、点滴・服用の管理や指導が主な仕事。
また手術前指導や手術後の流れを説明し、抗がん治療を受けている患者には、精神的なケアも行います。
向いている人の傾向
女性の力になりたい! 女性の味方でいたい! という性格の人が合っています。
産科は、生命の誕生という喜ばしい瞬間に立ち会えますが、死産や流産という悲しい出来事もあります。
婦人科は子宮がんや卵巣がんといった女性特有の疾患を抱えた患者や、不妊や中絶といったデリケートな悩みを抱えた患者もいます。
共通して言えるのは、繊細な気遣いがとても大切だということ。
患者の喜び、痛み、悲しみなどを思いやる優しさと共感力が求められます。
さらに、精神的なケアも含めたコミュニケーション力が必要といえるでしょう。
とはいえ、患者の感情に流されてはいけません。
冷静に行動・判断できる強さを持っている人が向いています。
◇ 小児科
仕事内容
乳児から15歳までの子どもが対象の診療科ですが、年齢は病院によって差異があります。
外来では、医師の診察介助、子どものケア、家族のケアが主な仕事。
病棟では、検温をはじめ、検査や治療の準備、沐浴などの清潔ケア、服薬や食事の介助、リハビリの移送介助、授乳など多岐にわたります。
またプレパレーション(検査や処置について、実施前に意味や方法などを家族や子どもへ具体的に説明し、心の準備をしてもらうこと)やインフォームドアセント(治療や検査を子どもにもわかりやすい言葉で説明し同意を得ること)も担当します。
子どもが注射や検査を嫌がり、暴れたり、走りだしたりすることもありますが、子どもの気持ちに寄り添い、落ち着かせて治療に入っていけるように導くのが、他の科にない重要な仕事です。
向いている人の傾向
子どもが好きな人! と言いたいところですが、疾患による症状に苦しんでいる様子を見るのは耐えられないという看護師もいます。
ですから、世話好きな人! が合っています。
乳児や幼児は自分の言葉で症状を説明できません。
また思春期にかかると恥ずかしさを覚えて症状を伝えてこないこともあります。
ですから、隠れている子どものサインに気づき、不安を受け止められる世話好きな性格の人が向いているといえるでしょう。
もうひとつ、忍耐力のある人も合っています!
患者は子どもですから注射1本打つにも半日かかることがあります。
また家族へ病状の説明を丁寧にしても、不安からくるストレスで怒鳴られることがあります。
家族が抱える悩みも読みとり、理不尽な言葉をはねのけ、家族のサポートまでまるごと行っていくには、強靭な忍耐や強さが必要です。
優しさや子ども好きだけでは務まりにくい科といえます。
◇ 精神科
仕事内容
統合失調症、うつ病、依存症など心の病気そのものが診療の対象なので、外来の医療行為は少ない方だといえます。
看護師の役割は、コミュニケーションによる心のケアです。
病棟では、バイタルチェックや点滴、与薬、内服チェック、検査介助などを行います。
また食事中に誤嚥などの危険がないかも見守ります。
患者自身が身体の異常を自覚できなかったり、病状をうまく伝えられなかったりすることがあります。
そのため看護師は、患者の状態をアセスメント(患者の情報と医療者側からの情報を解釈、統合しながら、看護上の問題点を理論的に分析すること)し、異変があれば医師に伝えることが重要な仕事といえます。
向いている人の傾向
一人ひとりに寄り添う看護をしたい人に向いています。
精神科は投薬治療が中心ですが、患者は服薬を拒否したり、勝手な判断で減らしたりすることがあります。
看護師は日ごろから患者と良好な関係性を築き、薬の管理に細心の注意を払います。
そのように、寄り添うことが好きな性格の人が向いているでしょう。
患者と信頼関係が生まれ、理解が深まったとき、大きな喜びを得られます。
ただし、精神的な疲労度は高いので、オンとオフの切り替えが上手い人がより合っているでしょう。
病棟では、予想外の出来事が起きます。
興奮している患者の力は強く、看護師が突き飛ばされることもあります。
ですから、体力(腕力・走力など)に自信のある人、また何が起きても冷静に対処できるというタフな人が向いているといえます。
【まとめ】
自分なりの目的や目標を持ち、前へ進む意識があれば、未診療科へ転職することは可能です。
3年後、5年後まで見通し、どのように働きたいかを考える参考にしてください。
自分の性格に合った診療科に就くことで、看護師として豊かな人生をおくりましょう。
【後編】では、緊急性が高く、集中力を必要とする科を紹介します。
その科に向いているのは、どのようなタイプの人でしょうか。