看護師の国家資格を持っていれば、助産師として働くことが可能です。
もしあなたが看護師で、専門性を活かした医療関係の場で活躍したいと考えているならば「助産師」を考えてみてはいかがでしょうか。
1年間指定学校で学び、試験に合格できれば助産師として働けます!
助産師は女性のみに許された資格で、高い専門性が求められます。
現在、産科医が少なくなる一方、助産師外来が出来るなど、注目されている分野です。
今回は「助産師はどのような仕事をするの?」「助産師に向いているのはどのような人?」「助産師の勉強ができる学校はどこ?」など、素朴な疑問にお応えします。
【産科医と助産師の違いについて】
ご存知ですか? 現在とても産科医が不足していることを。
あなたの街の産婦人科医院が、婦人科だけになっていませんか?
もしくは閉鎖していませんか?
これには幾つかの理由があります。
1つは、日本の出生率の減少。
少子高齢化社会が進につれ、出産する妊婦が減少しました。
そのため若手の医師は、将来性が期待できないと考え、他の科を選択する人が増えたのです。
2つめは、過酷な労働条件。
出産の予定日はありますが、あくまでも目安で、出産のタイミングは妊婦の体調次第です。
そのため、産科医の勤務が長時間になったり、不規則になったりします。
また、深夜や早朝の緊急呼び出しもあります。敬遠されるのも無理ないところでしょう。
3つめは、訴訟リスクが高いこと。
出産は<病気>ではないと考えられ<母子ともに健康でいるのが当たり前>の前提と考えられています。
しかし現実は、この世に赤ちゃんを誕生させるのですから、予想外のさまざまな問題が生じやすいのです。
最近は、妊婦の高齢化もあり、ハイリスクな出産が増えています。
もし何か起きてしまった場合、医療過誤を疑われやすいという特徴があるので、敬遠されるのでしょう。
その様な現状の中、注目され出したのが「助産師」です。
そこで問題です。
産科医と助産師の違いを知っていますか?
両方とも出産に携わりますが、少しだけ異なる点があります。
それは、産科医はすべての分娩を担当できますが、助産師は正常分娩だけという点です。
つまり母親とお腹の赤ちゃんの健康状態に問題がない場合に限り、助産師は助産行為ができるのです。
たとえば、逆子や帝王切開、母子の状態に異変が起きた時などは異常分娩と捉え、産科医が麻酔を打ったり手術を行うといった医療を施したりして分娩を進めます。
そこが決定的に違う点です。
では、医療行為が認められていない助産院で、分娩の最中などに問題が起きた時のフォローはどのように行うのでしょう。
たとえば、緊急帝王切開が必要になったり、吸引分娩を行なったりする時は、嘱託医師や提携医療機関に搬送するなどの対応を取るようになっています。
ですから、妊婦は助産院でも安心してお産に挑めるという仕組みになっています。
詳しく助産師の仕事を見ていきましょう。
【助産師の仕事】
助産師の、お産に関しての仕事は3つに分類できます。
「妊娠期」「分娩期」「産褥期(さんじょくき/出産後の体が元の状態に戻るまでの期間)」の3期です。
◇ 妊娠期
妊娠期は、妊娠確定前から出産の兆候が見られるまでの期間を指します。
妊娠が確定すると、妊婦は“妊婦検診”として定期的に健康状態のチェックを受けます。妊婦とお腹の赤ちゃんの両方を診てもらうためです。
妊娠月齢によって健診の頻度は異なりますが、14回~15回が一般的です。
助産師は、問診のほか、お腹の大きさや血圧を計ったり、赤ちゃんの心音を聞いたり、エコー(超音波)を使って元気がどうかを確認したり、尿検査・血液検査を行い問題がないかを見極めます。
もし異常妊娠を発見したら、産科医と連携を取ります。
妊娠は、体が常に良好というわけにはいきません。
たとえば、血圧の上昇や、肝臓・腎臓の機能障害が起きたり、胎児の発育不全や低体重が起きたりします。
そのため助産師は、危険性を十分に説明し、妊婦の体重管理を促し、生活指導を行います。
食事内容の見直し、運動方法を指導する一方で、妊娠中の悩みを聞いたり、不安について相談にのったりします。
身体だけでなく心まで真綿のように優しく抱きしめ、母子を見守り続けるのが仕事です。
また出産を迎えるにあたり、赤ちゃんのお世話体験や父親の妊婦体験など「母親学級」「父親学級」を実施し、母性や父性を育んでいくのも大切な役割となっています。
まとめると、下記の様になります。
◎妊娠の診断
◎妊婦の健康診断(問診、内診、体重測定、尿検査、血液検査、血圧測定など)
◎胎児の健康診断(聴診、触診、エコー)
◎妊娠の経過観察
◎異常妊娠の発見と医師との連携
◎妊婦の精神的ケア
◎妊婦およびパートナーの出産準備支援(母親学級・父親学級・バースプラン作成など)
◇ 分娩期
分娩期は、陣痛・破水といったお産の兆候が見られてから、赤ちゃんを出産するまでの期間を指します。
妊娠期は、助産師資格を持たない看護師が、業務の一部を担当することもできますが、分娩期は<妊婦のお産を助け、お腹の赤ちゃんをとりあげる>という助産師のみに許されている仕事です。
言い換えれば、1番の醍醐味の場といえるでしょう。
助産師は分娩の状態や母子の健康状態を観察しながら、心のケアも同時に行っていきます。
初めてのお産となる女性は、これまでに経験したことのない痛みや不安でパニックに陥ることも少なくありません。
妊婦がリラックスできる状態でお産に臨めるように、マッサージを行ったり、声かけをしたり、温めたりして付き添います。
また、呼吸法やいきみをアドバイスしながら、女性なりのきめ細やかなサポートも同時に進行させます。
助産師が行えるのは正常な分娩に限ってのこと。早産や逆子、帝王切開といった異常分娩とみなされる場合は、嘱託医師や提携医療機関へ搬送します。
まとめると、下記の様になります。
◎分娩開始や、母子の健康状態の診断
◎分娩の介助
◎異常発生時の対応。産科医との連絡
◎妊婦の心身ケアとサポート
◎産婦の食事や排泄の介助
◎新生児を呼吸させるための援助
◇ 産褥期
産褥期は、出産後から産後約2か月(6週間~8週)までを指します。
出産して母親となった女性が自立できるように、身体的・精神的・社会的なサポートを行う期間です。
助産師は母親の体が通常の状態に戻るまでの経過を診ながら、赤ちゃんのお世話の仕方を伝えていきます。
たとえば、母乳やミルクの与え方、おむつの取り替え方、沐浴の仕方などを丁寧に伝授。特に、初めて出産した母親は、母乳がどのくらい出ているのかわりません。
あまり出ていないときは母乳マッサージを教えます。
粉ミルクの場合も熱さと濃さを間違えると赤ちゃんは嫌がりますから、適正を伝えます。
他にもおむつを替えたのになぜ泣き止まないいのか、なぜぐずり続けているのか・・・そういった新米の母親には分からないことだらけに応えていくのが助産師です。
慣れない育児を心身ともにサポートする強い味方!
退院後の生活までも見据えて、母親が抱く不安や問題などを解決するのです。
一方、赤ちゃんが順調に成長しているかもチェックします。
正常な呼吸ができているか、体温調整は大丈夫か、順調に体重が増加しているかなど。
胎外活動への適応具合を観察して、異常がないかの発見に務めるのです。
もし異常が見つかったときは、医師と提携しながら適切な処置を施します。
まとめると、下記の様になります。
◎母乳指導&母体チェック
◎母体経過診断&ケア
◎新生児のケア&チェック
出産してから退院まで、通常分娩で4~5日、帝王切開なら10日前後が目安です。
出産後のきめ細かなフォローも助産院の魅力。
新米の母親にとって、産後のケア、食事指導、新生児の保健指導、精神的な寄り添い、声かけなどが頼もしいと感じることでしょう。
助産院は、食事が豪華な所も多いようです。
まるで一流ホテルのシェフが作ったような美味しい食事、お乳が良く出るように栄養が工夫された食事、出産後の祝い膳やフルコースが用意されていることもあります!
退院後、一ケ月検診に再び助産所を訪れます。
本来は、子宮の回復など母体をチェックするのが「産後一ケ月検診」ですが、核家族の時代ですから、母親から相談を聞くことも大切になって来ています。
「赤ちゃんの成長が不安」「母乳は足りているのか」「そもそも子育てに疲れを感じてきた」「自分の赤ちゃんを好きになれない」といった様々な悩みに対し、助産師は適切なアドバイスを行うことで、再び子育てしようという気持へと導きます。
助産師は、母親の気持ちに寄り添い、心身ともゆったりと過ごすような声かけをします。
「頑張り過ぎなくていいのよ」という言葉に救われた新米ママも少なくないでしょう。
助産院によっては、困ったときにはいつでも相談OKのところもありますし、わからないこと・不安なことにアドバイスをくれるところもあります。
多くはありませんが、産後一週間検診を無料でおこなってくれる助産院も中にはあるようです。
一言で、助産院といっても、方針がそれぞれ異なりますから、話をよく聞いて、納得できるところを見つけてください。
【お産以外の助産師としての仕事】
助産師というと“赤ちゃんをとりあげる”という印象が強い職業ですが、実は沢山の仕事があります。
女性が主体的に自分らしく生きられるようにお手伝いするのも助産師の役割だからです。
助産師は命と接する職業であるため、より良く生きられるように女性のサポートをします。
たとえば、講演会やセミナーなどを行うのもその1つ。
「望まない妊娠を避ける方法」や「パートナーとの良い関係の作り方」といったテーマが多いようです。
ポイントは、悔いなく生きるために自分の心と向き合うコツを聞いたり、自己肯定感を高めたりするための対話を行ったりすること。
また、妊娠や出産にまつわる基礎知識を地域の青少年に教えることも担当します。
「生命の尊さ」「妊娠のメカニズム」などを知ってもらい、後悔することのないように正しい知識を持ってもらうのが目的。
子どもたちの未来を守るために若年出産を考えてもらうことはとても重要です。
その一方で、高齢出産にも力を入れています。
ハイリスク妊婦はどうしても身体的な危険度が高まります。
理解してもらえるように、丁寧な説明を行います。
また助産師は、家庭内暴力を受けている人、虐待を受けている人、シングルマザーといった弱者の立場の人にも、リスクを軽減させるための啓蒙活動を行っています。
今後、助産師の社会的な役目は、さらに拡大していくと考えられています。
【まとめ】
助産師の仕事の多さに驚かれたことと思います。
さて、TV医療ドラマはたくさんありますが、助産師にスポットを当てたドラマもあります。
小川糸の小説で、2012年NHK「つるかめ助産院 ~南の島から~」(NHK)です。
主人公の女性が、南の島で出産することを決意します。
島の人々との交流や、主人公自身の成長を描き、母親となっていくハートフルストーリー。
離島の助産院を存続させるサブストーリーも含まれています。
命の誕生に向きあう女性たちへエールを送りたい内容です。
DVDになっていますので、ぜひ助産師を目指す人に見ていただきたい作品です。
もうひとつフランスのドキュメンタリー映画で「プルミエール 私たちの出産」(2007年制作、監督ジル・ド・メストル)も必見です。
世界10か国の妊婦の出産を映し出します。
アメリカ、タンザニア、メキシコなど。そして日本も!
ライフスタイルによっていろいろな出産のあることがわかります。
出産模様は、ほぼノーカット。
命をかけて産む女性の逞しさ、赤ちゃん誕生という神秘さに出会えます。
助産師を考えるきっかけになるかもしれません。
こちらもDVDになっています。
前編では、助産師の仕事内容について解説しました。
中編では、助産師になるためにはどうすればいいのかを具体的に説明します。
そちらも併せてお読みください。