転職を希望している看護師はたくさんいます。
新天地は今より、労働条件が良く、給与も高い。
福利厚生も整っていて、人間関係も良好・・・あなたも、そう望んでいませんか?
多くの看護師は、医療の転職エージェントに登録し、できるだけ希望に合致したところへ移ります。
でも、ちょっと待って!
転職後、エージェントを使って良かったと喜ぶ人もいるけれど、騙されたと嘆く人もいます。
天と地ほどの差はどうしてうまれるのでしょう?
今回はソコに焦点を当てます。
「こんな筈ではなかった・・・」と後悔しないようにするため、転職エージェントを利用する時のポイントを押さえておきましょう。
【「これだけは譲れない」を明確にしよう】
なぜ転職したいと思っているのか、そこが1番大切な点です。
たとえば、配偶者の転勤で自分も一緒に移ることに決めたから、親の介護のために家の近所で働きたいから、子育てと仕事を両立したいから、といった要因はあるかと思います。
もちろん、給与が安いから、人間関係に疲れたから、残業が多すぎるから、といった不満を解消する理由もあるでしょう。
いずれにしても、大切なのは転職しようと決めたときの1番の要因。
つまり「譲れないこと」を明確にすることです。
人間は弱いもので、好条件の仕事が目に入ると、自分が何を優先させるべきだったのか分からなくなります。
その流れのまま新しい仕事に就くと、やがて「あれ?」「おかしいな」と感じる時がやってきて、また転職を繰り返すことになります。
ですから、1番大切にしたいと思う軸を動かしてはいけません。
「譲れないこと」を心に留めることから、転職を始めましょう。
【「転職サイト」と「転職エージェント」の違いを知っていますか?】
検索すると、ネット上に沢山の看護師募集の求人を見ることができます。
そこには、さまざまな情報が混在します。
まずは「転職サイト」と「転職エージェント」の違いについて知っておかなくてはいけません。
「転職サイト」とは、採用企業(病院やクリニックなどの施設)がダイレクトに求人を出している募集です。
求職者は、自分自身で希望の企業を選び、詳細を確認して、直接交渉を行います。
「転職エージェント」とは、転職支援のプロであるアドバイザーが自分に付き、希望や条件などをもとに求人を紹介してくれるサポートサービスです。
求職者はアドバイザーのアドバイスどおりに動けばOK。しかも無料。
この2つを比べれば後者の方が良く感じられますが、実は両方にメリットとデメリットがあります。
◇ 「転職サイト」のメリットとデメリット
メリットは、自分のペースで条件などを閲覧し、自分のタイミングで応募できることです。
“いい求人があれば転職を考えたい”とか“半年かけてじっくり探したい”という風に、スケジュールを自分の都合で管理できます。
面接日も労働条件も自分で確認してから、実行に移します。
デメリットは、自分の検索力が全てだということ。
好条件の求人を見落とすことがありますし、募集の締切日が過ぎていたというミスも起きがちです。
最初から最後まで、自分がしっかりしていなくてはいけません。
◇ 「転職エージェンシー」のメリットとデメリット
メリットは、転職エージェンシーに登録するとプロのアドバイザーが自分に付いてくれることです。
希望する条件を告げると、膨大な情報の中からあなたに合う求人を探し出し、提案してくれます。
また応募する段階になると書類をチェックしてくれたり、面接対策をしてくれたり、あなたのことを採用担当者にアピールしてくれたりします。
エージェンシーによっては、給与や待遇面の交渉も行ってくれます。
デメリットは、アドバイザーに頼り過ぎていることです。
あなたとアドバイザーとの相性次第では、気がかりが増えることに留意しなくてはいけません。
連絡がしつこかったり、逆に音沙汰がなかったり・・・、距離感が気になりますね。
また、アドバイザーの能力次第でサービスの質が変わるという弱点もあります。
もし百戦錬磨のアドバイザーが付いたら、好条件の求人を提示してくれるかもしれません。
しかし、入社したてのアドバイザーが付いたら、低条件の求人が差し出されるかもしれません。
そのような危うさがあると覚えておきましょう。
【不安を防ぐためのポイント その1】
どちらも一長一短あることは、理解できたと思います。
その上で、どうすれば最善の転職ができるのでしょう。
ポイントは先に書いた「譲れないこと」を思い出してください。
具体的な例を紹介します。
たとえば、あなたが転職したい病院やクリニックが決まっていたとします。
AかBの施設に就職したい、それが譲れない条件だったとしましょう。
そのときは「転職エージェント」を活用する必要はありません。
なぜなら、エージェントは“希望条件に合う職場を探したい人が使う場”だからです。
目的地が決まっているので利用するメリットはなし。
AかBの企業はHPで募集をかけることもありますし、ネット上の転職サイトに求人を出していることもあります。
またハローワークや新聞に出ていることも。
さらにAかBに勤めている友人がいる時は、補充の募集がかからないかを聞いてみるのも手です。
パート看護師を探しているということもありますから。
お世話になった看護師専門学校や看護大学の先生から、近況を伺うのもいいでしょう。
リアルな情報はネット上にのっていませんから重要視してください。
もし、すぐに求人がなかったとしても、半年とか1年とか時間をかけてチェックを続けましょう。
自力がいる作業ですが、上手くいったときの喜びは大きいですし、希望のところで働くことができれば、精一杯頑張ろうという気持ちになれます。
たとえば、あなたの譲れないことが「時間」だったとします。
「〇時から〇時まで。残業はなし」というこだわりがある時は「転職エージェント」を活用するのがいいでしょう。
登録後、アドバイザーに条件を伝え、求人をピックアップしてもらいます。
その際に「譲れないこと」をしっかり伝えておきましょう。
提案された求人を絞り込み、面接を受けたい企業を決めます。
アドバイザーが仲介してくれますから、あなたは指定された日時に出向くだけ。
就職した後で、情報が事実と違っては困りますから、事前にアドバイザーが労働条件や給与などを確認します。
お金や残業の有無を自分で確認する事は気が引けますから、ありがたいシステムですね。
このように「譲れないこと」は、転職を繰り返さないための大事な要素です。
「譲れないこと」は人によって異なります。
「家から10分以内」「給与は〇〇万円以上」「残業は一か月10時間以内」「夜勤専従」「始業は10時から」など、何でもアリです。
ところで、なぜ転職者の不満や愚痴をよく耳にするのでしょうか。
問題は出発点の齟齬にあります。
先のAかBへ転職を望んでいる看護師を例にとって解説しましょう。
その看護師が医療の転職エージェントに登録したとします。
アドバイザーは「残念ながら、現在はAもBも求人がありませんでした。同じ条件でしたらCやDはいかがでしょうか? Eならさらに好条件ですが」と、別の企業を紹介します。
アドバイザーは紹介するのが仕事ですから、一生懸命探して提案をするのです。
せっかく紹介してくれるのだから、と看護師はEの面接を受けて、合格。
「好条件だし、縁かもしれない」と、そこで働き出してみると「ああ、Aは風通しの良さが魅力で入社したかったのかも」「Bは師長が優秀で、温かみがあると評判だったから受けたかったんだわ」と、現実がハッキリ見えます。
残ったのは未練。
しばらくすると、もう一度転職しようかしら? と考え始めるかもしれません。
この場合、悪かったのは転職エージェントのアドバイザーでしょうか?
いいえ「譲れないこと」から目を背けた求職者に難があったのです。
思い通りにならないとイライラが募り「あのアドバイザーがEを紹介しなければ・・・」とか「AかBで、とお願いしていたのに、なぜ他を紹介したの?」と思ってしまいますよね・・・。
だから、ダークな意見がネット上に、経験談としてのっているのです。
要因は、求職者が「譲れないこと」から目を背けてしまったことと、アドバイザーへの対応が曖昧だったこと、この2点でした。
【不安を防ぐためのポイント その2】
有名な医療の転職エージェントを活用する際に、気を付けておきたい2つのポイントを説明します。
先にも述べた通り、自分とアドバイザーの相性問題や、経験値の低いアドバイザー・高いアドバイザーがいますから、どのような求人を紹介されるのかわからないところが不安材料です。
回避するための対策としては、エージェントの登録を2~3社平行して行うこと。
一緒に仕事探しの作業を進めていく中で、あのアドバイザーとは阿吽の呼吸がとれるなとか、このアドバイザーはこちらの状況を読まずに一方的に連絡してくるな、という風にわかてきます。
求人の内容も、ドンピシャのものを提案してくれる人もいれば、かなり外れた内容を持って来る人もいます。
自分の意にそぐわない時は、遠慮せず他のアドバイザーに変わってもらうか、その転職エージェントから自分が降りればいいのです。
最善を考えて行動しましょう。
もうひとつは、非公開求人を持っていることも気にかけておきたいポイントです。
有名な大手の転職エージェントは、非公開情報をたくさん持っています。
ではなぜ非公開なのでしょう?
それはネット上に公表すると応募者が殺到してしまうため。
また、ここぞという人に紹介する優良な求人内容だからです。
求職者はエージェントを見極めますが、逆も然りで、エージェントも求職者を見極めます。
アドバイザーと上手な関係を築ける性格の人ならば、転職エージェントを活用した方が手厚いサポートが受けられるでしょう。
【不安を防ぐためのポイント その3】
一言で転職エージェントといっても特徴があり、幾つかに区分できます。
ここでは、特化型医療の転職エージェントについて説明します。
たとえば、見知らぬ県へ引っ越さなければならない時は、特化型医療の転職エージェントが力を発揮します。
引っ越し先の地域に、親戚も友達もいなく、その風土もよく理解していないとなると、その地で職を探すのは難しいですね。
病院やクリニックなどの評判もわからず、どのような医師がいるのかも情報が入ってきません。
このように「?」が多いときは、特化型医の転職エージェントを活用するのがマルです。
全国を網羅し、沢山の求人を持っている有名な転職エージェントを利用する方法もOKですが、その地域の医療機関に詳しいエージェントの方が、その土地に深く根ざしている分、良い転職先がみつかる確率が上がります。
また、あなたが看護師のほかに助産師など何かしらの資格を持っていて、それを活かしたい時も、特化型医療の転職エージェントを活用するのがマルです。
たとえば「出産を積極的に手伝ってくれる看護師が欲しいな」「呼吸系に詳しい看護師がいると助かる」など、日常の中で医師がこぼした言葉をアドバイザーが拾い、覚えているからです。
求人のペーパーに載っていない情報を持っているのは強みです。
特化型医療の転職エージェントも選択肢のひとつに加えてみてはいかがでしょうか。
その際も「譲れないこと」は、アドバイザーに必ず伝えてください。
【まとめ】
ネット上にのっている不平・不満の声を信じて、転職エージェントを使わない、と決めつけてしまうのはもったいないと思います。
長所と短所を知った上でうまく活用すれば、幅広い情報の中から、あなたに適した求人と出会えるでしょう。
「譲れないこと」を心の軸において、柔らかな対応心掛けてください。
最後に、転職エージェントは「本当に無料なの?」という疑問にお応えします。
プロのアドバイザーが付くのだから、就職が決まった時に高額な料金を請求されるのでは・・・と心配しますよね。
ご安心ください、最後まで無料です。
なぜなのか、そのシステムを説明しましょう。
転職エージェントは、求職者を企業(病院やクリニックなど)に紹介することで、収益を得ます。
つまり企業から転職エージェントへ紹介料が支払われるのです。
ですから求職者は無料。
企業からすれば、募集に大金をつぎこむため、意図に合った看護師が来てほしいと願っています。
すぐ辞められてしまうようでは、企業側も甲斐がない。
そのためにも、求職者は出発点を間違えることなく「譲れないこと」を守り、2度目、3度目の転職がないようにしましょう。
企業側、転職エージェント、求職者の“3方よし”を実現できれば「こんな筈ではなかった・・・」のない世の中になります。