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看護師の資格を活かして保健師の資格も取得 新たなキャリアを手に入れてスタートしよう!【前編】

看護師として働きたいけれど残業や夜勤はNGの人、ブランクがあって看護職の復帰に躊躇している人、家庭と仕事を両立させるために変わりたいと思っている人・・・いませんか?

もし、あなたが正看護資格を保持していて、新たなキャリアを手に入たいと思っているならば「保健師」を考えてみてはいかがでしょう。

一年制の保健師養成学校で学び、国家試験に合格できれば、保健師として働けます。

自分の時間や家族との関係を大切にしながら、新しい生活をスタートできますよ!

【看護師と保健師の違いは?】

看護師と保健師、似た雰囲気がありますが、仕事内容はどのように違うのでしょう。

看護師は、病気を発症した人や、怪我をした人などの治療や回復などに携わる仕事です。

一方、保健師は、病気や怪我などを未然に防ぐため、乳幼児から高齢者まであらゆる人々のプライマリーヘルスケア(プライマリーとは「初期の、最初の」、ヘルスケアとは「健康づくりへ取り組んでいくこと」の意味。病気や怪我を疑ったときに受ける初期診療で、健康を作っていくこと)を行う仕事です。

たとえば、私たちは健康に不安を感じた時、保健所や保健センター、学校や勤め先の医務室へ行ったことがあると思います。

「眠れなくて仕事(勉強)への意欲がわきません。困った・・・」「お腹が出てきた。メタボリックかなぁ、どうすればいい?」「赤ちゃんが母乳を飲みません。育成が不安だわ」と、いろいろ相談にのってもらいます。

その話を聞いてくれる人が保健師です。

保健師は、人々の健康を見守り、保健指導をしてくれる予防医療の専門家。

健康的な生活が送れるように生活改善のアドバイスやサポートをしてくれるのです。

端的に言えば「看護師は、病気や怪我を治す仕事」「保健師は、病気や怪我を未然に防ぐ仕事」といえます。

私たちが健康でいられるのは、保健師に背中を支えてもらっているからにほかなりません。

厚生労働省の「令和2年 労働安全衛生調査(実態調査)」によると、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は61.4%、メンタルヘルスの不調により連続1か月以上休業した労働者または退職した労働者がいた事業所の割合は9.2%でした。

今の世の中はストレスだらけ。

身体の不調だけでなく心の健康も守るため、保健師の存在意義がますます大きくなっていくでしょう。

【どうすれば、保健師になれるの?】

保健師になるためには、保健師資格と看護師資格の2つの国家資格を取得する必要があります。

現在、あなたが看護師の国家資格を取得していたなら、あとは保健師資格を取るだけです(保健師資格を取得しても看護師資格がなければ保健師として働けません)。

取得方法は、1年制の保健師養成学校で学ぶか、保健師専攻課程のある4年制の大学の3年次に編入して学ぶ方法です(この場合は必要な単位を取得するのに2年間)。

卒業してから国家試験に挑み、合格できれば保健師を名乗れます!

現在看護師として働いて、仕事を辞められない事情があるならば、夜間部で学ぶ方法もあります。

しかし、寝る時間が足りなくなるので、仕事と学業の両立はとても険しい道だとお考えください。

なお、保健師試験の合格率は、例年80~90%で推移しています。

保健師の仕事は、活躍できるフィールドがとても広いです。

特に、超高齢化社会へまっしぐらの日本は「予防医学」がとても重要。

その意味からも、保健師のニーズは増える傾向だと考えられています。

ところで、保健師に向いている人はどのような人でしょうか。

まずは、親しみやすい人です。

多くの人々から「あなたに相談したい」と思ってもらえるような存在になるには、相手に安心感や信頼感を与えられる親しみやすさが大切です。

仏頂面や不機嫌な表情をしていては、相談する気も失せてしまいますから。

次に、保健師は悩みや不安を抱えた幅広い人と接するので、分け隔てなくどんな人とも良好なコミュニケーションをとらなければいけません。

相手の気持ちに寄り添い、思いやりを持って接することが肝要です。

心根が優しい人も適しているといえるでしょう。

さらに、分かりやすい説明ができる能力も必要不可欠です。

子どもや高齢者に、難解な保健用語で説明しても理解されないかもしれません。

ポイントを絞り込み、わかりやすい言葉で上手に伝えることができる人も向いているといえます。

【保健師は、働き方がたくさんあります】

保健師として活動できる場はたくさんあります。

たとえば、保健所や市役所などで働く「行政保健師」、企業の健康相談室や医務室などで働く「産業保健師」、学校の保健室で働く「学校保健師」、病院や健診センターなどで働く「病院保健師」などがあります。

就職先によって働き方が異なります。

どのように違うのか説明します。

◇ 行政保健師(自治体保健師)

行政保健師とは、その名が示す通り行政機関で働く保健師のことです。

各行政機関が実施する採用試験を受けて合格すれば、行政保健師になれます。

都道府県または市区町村にて、公務員としての所属になります。

ただし、試験に際し年齢制限を求めているところもあるため、看護師から転職するならば20代のうちをお薦めします。

ちなみに、保健師全体の約7割が行政保健師として活躍しています。

都道府県感管轄の保健師は、本庁、保健所、児童相談所、精神保健福祉センターなどに配属されます。

仕事内容を簡単に説明すると、本庁では、健康増進や疾病の予防、地域包括シスイェムの構築、災害時の対応マニュアル作りなど。

保健所では、健康福祉に関する相談支援、難病患者の支援など。

児童相談所では自動虐待防止のための活動、子どもや家庭に効果的な援助など。

精神保健福祉センターは福祉に関する知識の普及、市区町村への技術指導などです。

つまり、1次予防をテーマとした調査&分析、法令知識の理解、企画の立ち上げなどを行います。

住民と接する機会は少ないですが、政策や制度を作ることによって住民を守っているのです。

市町村管轄の保健師は、住民の身近な存在として地域に根ざした活動を担当します。

配属先は、市区町村の本庁、市町村保健センター、子育て世代包括支援センター、福祉事務所、地域包括支援センターなどです。

本庁では、生活習慣病予防、乳幼児健診実施計画、虐待防止対策の立案など。

保健センターでは乳幼児健診、健康相談、訪問指導など。

子育て世代包括支援センターでは、妊娠期から子育て期にわたるまで、専門的な知見と当事者目線の両方を活かした切れ目ない支援など。

福祉事務所では、生活保護などの経済的自立支援など。

地域包括支援センターでは、高齢者の生活支援や介助者の負担軽減サポートなどを行います。

つまり、乳幼児から高齢者まで病気の予防を目的とした健康相談、難病予防、メンタルヘルスの支援活動など、2次予防3次予防を行います。

地域住民と直にコミュニケーションをとるのが特徴です。

また啓蒙活動の一環として、市民向けの講習会や研修会などのイベントを企画・運営します。

行政保健師の働き方は、公務員ですので残業少なめ、夜勤なし、土日休みが基本の就労です。

しかし、ご存知の通り、日本中がコロナ禍に陥り、保健師は家に帰れないくらい多忙になりました。

コロナにかかった患者の入院先の確保や、PCR検査、PPE着脱などの実技研修などを担ってくれたのも保健師でした。

総務省は新型コロナ感染者の急増という事態を受け、保健所で働く保健師を2021年~2022年の2年間で約900人増員すると決定しました。

保健師の公務員試験は、一次試験が筆記(教養試験・専門試験)、二次試験が面接・小論文を課せられることが多いです。

試験内容は自治体によって異なりますから、公務員試験の実施日や応募条件などをHP等で情報収集してください。

最後にデメリットを1つ。

行政保健師は公務員ですので、人事異動により転勤があります。

引っ越しは避けられないかもしれません。

◇ 産業保健師

産業保健師は、企業や事業所の保健室(医務室、健康管理室など企業によって名称は異なる)に正社員として所属し、産業医や人事担当者たちと共に、社員の健康状態をチェック、労働環境の改善、データの収集&分析などを行う仕事です。

平たく言えば「社員の身体と心の健康管理を行う」のが役割。

また、新しい感染症の対応も重要課題になってきています。

企業が産業保健師を雇い入れることは、義務ではありません。

ですから、全企業に産業保健師が居るとは限らないのです。

しかし、1000人以上の企業では、雇用しているケースが多いといえます。

近年、過労やうつ病などが問題になっていることから、社員の心の状態をチェックすることが重要視されているからです。

産業保健師の代表的な仕事の1つが、健康診断です。

目的は、社員の健康状態のチェックと早期発見。

その結果の管理&分析、保健指導を行います。

健康診断を外部健診機関へ委託している企業は、外部との連絡・調整なども担当します。

次に重要な仕事は、メンタルヘルスケアです。

仕事に対してストレスや不安を抱えていないか社員と面談を行ったり、まだストレスに気づいていない人を早期発見し医療機関への受診を促したりします。

さらに過重労働対策も担当します。

長時間労働や過重労働をする社員に対して面談を行い、職場環境に問題があるときは、その対策も講じます。

社員の健康を損ねる原因が職場にあるのかないのかをチェックするのです。

有能な社員がストレスや病気などで退職や休職に追い込まれるのは、企業にとって損失。

そうならないために、あらかじめ対策を施し、予防する道筋を作る、これが企業保健師の仕事といえます。

もちろん、企業内で起きた怪我や病気の手当を行いますが、採血や医療行為は行わないのが原則です。

企業保健師とってパソコンスキルは必須。

健康診断のデータ管理に使うのはもとより、案内文の作成やHPに載せるコラムなども作成するからです。

エクセルやパワーポイントが使えれば、なお良いでしょう。

働き方は、日勤、土・日曜休み、夜勤なしが基本です。

企業ですから福利厚生、各種手当が充実しています。

そのため、企業保健師はとても人気です。

しかし、就職は狭き門。

離職率が低いことと、空きがあっても募集は1名ほどしかかからないことが多いからです。

では、どのように探せばいいのか。

企業のHPに募集が載ることがあるので、こまめにチェックしてください。

また、保健師紹介エージェントに登録するのも一つの方法です。

企業の人事が面接しても産業保健師の本質(力量)を見抜くのは至難の業。

そこで頼るのが保健師紹介エージェントです。

エージェントの力を借りて優秀な人材を採用したいと思っている企業が多いのです。

ですから登録するのもいいでしょう。

あまたいる保健師の中から採用されるためには、産業カウンセラー、栄養士、衛生管理者といった幾つかの資格をもっていると武器になるかもしれません。

しかし、最終的には企業との相性です。

産業医や人事課、社員の方々と良好な関係を築けるかどうかが鍵。

コミュニケーション力を見ているので、面接はとても重要だと心得ましょう。

【まとめ】

保健師は、予防医療の支援を続けることで「健康診断を受けてみよう」「生活習慣病を見直してみよう」という人々が増えます。

習慣や行動を変えることができたとき、大きな遣り甲斐や達成感を感じることでしょう。

保健師は、社会全体を見守る役割も担っていますから、感染症なども最小限にくい止める対策を講じます。

信念や保健師としての矜持を持って働けば、子どもから高齢者まで笑顔のあふれる健康な街作りができることでしょう。