看護業務は好きだけれど、臨床の場で働きたくない看護師は意外と多いものです。
もっと一般の企業に勤める感じで働きたいな・・・そう思ったことはありませんか?
看護師が必要とされている職場は、まだまだあります!
国家資格を活かして、あなたらしく居られる職場で、輝いてください。
【看護師スキルは幅広い分野で望まれている】
今回は「病院」や「クリニック」ではないところで働きたい看護師の仕事の中でも“一般企業で働くかたちに近い看護師の仕事”です。
人が集まれば、不測の事態に陥ることがあります。
ですから企業は看護師を配置して、万全の態勢を整えるのです。
もし転職を考えているならば、これから紹介する5つの職場を一度考えてみるのはどうでしょう。
その際に、自分の性格と照らし合わせて熟考してください。
人気があり楽しそうにみえても、実は重労働だったり、想像とは異なる気疲れしたりすることがあります。
まずは、どのような仕事内容か、どのような働き方をするのか、をよく吟味しましょう。
良い転職ができる一助になれればと思います。
◇ ホテル
名の通った一流ホテル、大規模なビジネホテル、リゾート地の有名ホテルなどには医務室が用意されています(すべてのホテルに医務室があるわけではない)。
看護師はそのホテルで勤務するという働き方があります。
宿泊客が怪我をしたり、体調を崩したりしたとき、すぐに適切な対応をとるための医務室です。
家族や友人と楽しく過ごすホテル生活を、少しでも快適な場にしたいというホテル側の意向で設置。
これは「おもてなし」のひとつとして考えられています。
ホテルに産業医は居ますが、常駐とは限りません。
ほとんどは看護師だけの勤務と考えてください。
また看護師は、ホテルで働く従業員の健康管理も担います(データを入力する作業があるので、パソコンスキルは必須)。
知識と臨機応変さが求められる看護師業務ですが、どのようなホテルかによって業務内容が多少異なります。
たとえば、結婚式が行われるような大きなホテルでは、急性アルコール中毒や食べ過ぎてお腹をこわしてしまう大人の処置などにあたることが多いようです。
ビジネスホテルなら、仕事の接待をした際に飲み過ぎたビジネスマンや、仕事のストレスや過労で不眠を訴える客の対応。
リゾートホテルでは、はしゃぎ過ぎた子どもの怪我や、宴会を開いて体調を崩した大人、スキーなどのレジャー施設で捻挫や骨折をした客の処置が多いようです。
看護師は、症状に適した対応(応急処置)がメインの仕事になりますが、病院へ搬送する必要があるかないかの判断を迫られる時もあります。
深刻な怪我や病気だった場合、初動で判断ミスをすると、その後の経過が変わってしまうから重大です。
またホテルから遠いところに救急病院があるときは、救急車を要請して到着までかかる時間も計算に入れなければいけません。
特に避暑地などは、地理的条件や気象状況なども考慮して看護にあたります。
都心や繁華街にある有名ホテルでは、外国の客が多く泊まります。
英語が堪能であれば看護がスムースに行えるでしょう。
求人は、非正規雇用、契約社員、アルバイト、パートなどいろいろです。
仕事内容や勤務態度などが認められれば正社員登用の可能性アリのホテルもあります。
交通費も全額支給のところと、そうでないところがあります。
ですから求人の詳細をよく確認してください。
働き方は、1つのホテルに看護師は1名が基本です(2名のところもあり)。
看護師としての経験が浅い人や知識不足の人は採用され難いかもしれません。
逆に、産業看護師、医務室勤務といった経験があると、採用率が高くなるようです。
命にかかわることですから、ホテル側が求めるハイレベルな基準があると心得ましょう。
そこで、一考。
もしあなたが小児科勤務ならば、子どもの怪我の処置をよく行うホテルを選ぶとか、外科勤務ならば、スキーやスケートといった宿泊客が多いホテルを選ぶとか、需要に応じた適地を考える方法が良いと思います。
要は、ホテルの担当者に「この看護師にお任せしたい」と思っていただきたいのです。
今までの職歴の強みを活かさない手はありません。
求人はホテルのHPに募集に載ります。
しかし雇用条件が良い魅力的な内容だと応募が殺到して、すぐに埋まります。
まめにチェックできる人は良いのですが、そうでなければ看護系の転職エージェントに登録しましょう。
募集がかかったらすぐ行動を起こすくらいの心構えで応募してください。
なお、客や従業員が体調を崩すのは日中だけではありません。
特にリゾート地では、夜勤のできる看護師が採用されやすい傾向にあります。
夜勤で経験を積み、翌年にまた新たなホテルで経験を積み・・・・という風に、キャリアを上げていき、最終的に自分の望むホテルで日中に働く、という看護師もいるようです。
◇ デパート・百貨店
百貨店やデパートも大勢の人が集まることから、医務室(救護室)を用意しているところがあります。
といっても全てではありません。
各都道府県の中でも都市部の百貨店・デパートに限り医務室が設置されていると言ってもいいでしょう。
看護師はその百貨店・デパートで勤務するという働き方になります。
白衣を着て看護にあたることが多いようです。
看護師の役割は主に2つ。
ひとつは従業員の健康管理です。
健康診断時の産業医のサポートやその結果のデータ管理を行います。
問題のある人には、健康指導を促します。
また接客業という職種柄、ストレスが重くのしかかることがあるため、従業員へのカウンセリングにも力を入れています。
心身の健康を守るという意味で、メンタルケアも行っているのです。
もうひとつは、来店した客の応急応対です。百貨店やデパートは、子どもを連れた来店が多いため、子どもの怪我や急な腹痛の応対にあたります。
このような場合、苦しんだり、痛がったりしている表情を見て、取り乱す親がいますので、子どもだけでなく親にも不安を与えないような言葉がけが必要です。
高齢者の場合、寒さ・暑さなどから体温調整がうまくいかずふらついて医務室へ来ることがあります。
看護師は身体をいたわりながら優しい声かけと処置を施します。
保健室に来る人は、数ある百貨店やデパートの中から、その店が良いと選んで足を運んできた客です。
看護師は企業に勤める一人として、丁寧に応対しなければいけません。
求人は、欠員が出た時だけです。
HPをこまめにチェックするといいでしょう。
また看護系の転職エージャントに登録する方法もアリです。
雇用形態はさまざまで、大手の百貨店やデパートは、正社員、契約社員、派遣社員などがあります。
中規模の百貨店やデパートでは、契約社員、アルバイト、パートで募集がかかる傾向があります。
正社員といっても、1つの店舗に直接雇用されるケース(たとえば東京の銀座店の勤務)、支店をまわって働くケース(全国にある店で勤務)があります。
また給料という形と、年俸で額が決まっている形、時給換算の形などがあります。
看護師募集ではなく、保健師募集だったりするところもあります。
条件も一律ではなく、百貨店やデパートによって特色がありますから、応募する人は詳細を良く読み、業務内容や雇用形態を理解した上で申し込んでください。
働く上でのメリットは、勤務時間がはっきりしていることです。
百貨店やデパートは閉店時間が決まっていますから、残業や夜勤はありません。
また開店時間も、休日も決まっています。
その意味で、働きやすい職場といえるでしょう。
ところで、最近は、テナントが沢山入った大型ショッピングモールが増えてきました。
その商業施設にも、医務室を設置するところが多くなって来ています。
具合が悪くなったり、怪我をしたりした客の応急処置を行います。
家の近所にショッピングモールがあるならば、そこのHPをチェックしてみるのも良いでしょう。
◇ 銀行
銀行に医務室があることは、あまり知られていません。
というのも、来店客のために用意されていないからです。
つまり、従業員のための医務室という役割です。
日本銀行をはじめ、メガバンク、地銀には、しっかり設置されています(全ての銀行ではありません)。
しかし、銀行へ行って「医務室」の表示を見たことはありません。なぜでしょう?
それは本店しか設置されていないからです。
支店は、従業員がそれほど多くないため医務室を置かないのです。
銀行は企業ですから、産業医がいます。
看護師は、診療介助や健康診断のサポートに入ります。
またデータの入力、分析、資料作成やメール処理も行ないますから、パソコンスキルは必須です。
衛生管理も行います。
医務室は仕事中に体調を崩した行員を看護する場として作られていて、最近はメンタルヘルスケアにも力を入れているようです。
交渉事の多い行員ですから、心が疲弊することが多いのかもしれません。
また人間関係に悩む行員へのケアも大切な仕事の1つと捉えているためでしょう。
勤務時間は、行員が働く時間帯と同じです。
残業や夜勤はありません。
臨床現場と比べれば、とても働きやすい職場だと言えます。
看護師ではなく、保健師の資格を有する者、という条件が付いている銀行もあります。
また「健康管理業務または医療機関で〇年以上実務経験のある者」という条件を述べている銀行もあります。
いずれにしても詳細をよく調べてから応募しましょう。
欠員が出た時に求人がかかる程度ですから、募集の数はあまり多くないと思ってください。
あっても非公開求人の中に含まれることが多いです。
募集を見つけ出すためには、看護系の転職エージェントに登録して応募する方法が最短の道筋かもしれません。
働き方としてはパートかアルバイトがほとんどのようです。
◇ 空港
空港で働く看護師をエアポートナースと呼びます。
職種は2つあり、1つは空港内で体調を崩した人の対応や処置などを行う「空港看護師」もうひとつは感染症の検疫業務や衛生調査を行う「検疫看」です。
今回、空港看護師に焦点を当てて説明します。
空港内には「空港クリニック」(診療所、メディカルセンターの名称の所もあり)が設置されていて、看護師はそこでの仕事となります。
仕事内容は、先に書いた体調を崩した旅行客の対応ほか、空港職員の健康診断や予防接種、医師の下で診療補助、そして空港内医療班として防災活動にも参加します。
あまり知られていませんが、診療所を利用できるのは空港を利用する人だけでなく、周辺に住んでいる人も受診できます。
つまり空港クリニックは、緊急診療と一般診療の両方に対応しているのです。
空港を利用する旅行客は、赤ちゃんから高齢者まで幅広い年齢層です。
症状もさまざまで、時差の関係で体調を崩したり、空港内外で怪我をしたり、持病が悪化したり、急な発熱が出たり、妊婦が産気づいたり・・・何でもアリ、と思って間違いありません。
また長時間のフライトによるエコノミー症候群(長時間座って足を動かさないでいると血行不良が起こり、血栓が血管の中を流れて肺に詰まり、肺塞栓などを引き起こす病気)の疑いがある人も現れます。
空港看護師は適切な応急処置を行いますが、それだけでなく、これからの旅行をどのように過ごせばよいのか、注意すべきポイントは何か、といった助言・指導も行います。
精神面の不安を少しでも取り除けるように、メンタルヘルスケアまで担うのです。
空港看護師は、患者をクリニックで待つだけでなく、空港職員から連絡が入れば医師とともに現場へ駆けつけます。
旅行客が意識障害を起こしていることもあるからです。
緊急性が高い時は、救急車を手配し、近隣の病院へ搬送します。
さらに空港内で大規模な事故(自然災害や航空機災害等)が起きた時は、被害にあった客のトリアージ(傷病者の治療優先順位を決めること)も行います。
空港という場所は、さまざまなケースが考えられるところです。
空港看護師は、救急処置の経験を積んでいる人が向いているといえるでしょう。
空港は全国にありますが、医師や看護師が常駐している空港クリニックは限られています。
それらは民間(協定機関)によって運営されています。
たとえば、成田国際空港は、成田国際空港クリニック(日本医科大学)と空港クリニック(社団國手会)。
羽田空港は、羽田空港クリニック(東邦大学)と羽田空港第3ターミナルクリニック(東邦大学)と東京国際空港診療所(医療社団法人翔医会)。
関西国際空港は、関西国際空港クリニック(近畿大学)。
大阪国際空港(伊丹空港)は、大阪国際空港メディカルセンター(豊中市医師会)。
新千歳空港は、新千歳空港クリニック(医療法人社団 尾谷内科)。
セントレア空港の愛称で親しまれている中部国際空港は、中部国際空港診療所(藤田医科大学)。
福岡空港は、丸岡内科クリニック(医療法人丸岡内科クリニック)です。
つまり、日本全国では、7つの空港で10か所のクリニックが設置されているのです。
空港看護師に求められるのは、応急処置の経験の他に、語学力も重要と考えられています。
海外から渡航してきた外国人の問診やケアを行う必要もあるからです。
国際空港の勤務を目指すならば、語学力は必須。
TOEICならば700点以上、英検ならば準1級以上が合格レベルです。
空港クリニックは規模が小さいため、働く看護師は1~3人ほど。
欠員が出た時に応募がかかる程度なので、求人をなかなか見かけないのが実情です。
求人は、先に書いた運営している病院(大学病院など経営母体)のHPに掲載されます。
また採用されたとしても、空港に配属されるかどうかは分かりません。
というのも、母体である病院で経験を積んでからということもあるからです。
一方、看護系の転職エージャントに非公開求人として募集されることもあります。
たとえば航空会社グループの派遣会社が空港勤務の看護師・保健師を募集することがあるからです。
登録しておいてチャンスを逃さないようにしてください。
雇用形態は、空港のクリニックによって異なります。
病院(母体)で採用されて派遣という形で空港に勤務する場合は、病院と同じ雇用条件と考えて良いでしょう。
またパート扱いのところもあります。
いずれにせよ、詳しく調べてから応募してください。
空港看護師として働くには、面接でコミュニケーション力をアピールしましょう。
「さまざまな患者の看護をしてきた私は臨機応変に動ける」「私は総合病院で複数の診療科を経験している」「私は地域医療で、他業種の方々との連携で仕事を進めるのが得意」といったような経験談です。
募集がかかる時は、即戦力の空港看護師を求めていることが多いです。
それに応えましょう。
なお、24時間開いている空港は、看護師が3交代制での勤務です。
つまり、夜勤もあるという意味。
希望に沿った内容なのかどうか、細かく調べてから応募してください。
◇ TV局
企業の中に医務室が設置され、そこに勤める看護師を産業看護師といいます。
TV局も企業の一つですから、キー局をはじめ準キー局、ローカル局に医務室が設置されています。
一般の企業と異なるのは、TV局員(社員)だけではなく、多くの関係者が局に出入りすることです。
番組制作関連会社、タレント、俳優、芸人、観覧者、グッズなどを販売している店もあるので一般の視聴者も買うために入れます。
医務室はTV局に出入りするすべての人が応急処置の対象になります。
そのためTV局の看護師は、2~3人と多めに採用するのが特徴です(企業の看護師は1人体制が一般的)。
TV局内に医務室を設けていますが、局に併設されクリニックや診療所(支社や支局なども含む)もあるので、1局に1つの医務室とは限りません。
看護師の主な仕事は、社員の健康診断とデータの記録、その結果に基づいた健康指導・教育です。
もちろん、怪我をした人や体調を崩した人の手当も行います。
数ある役割の中で、注視しているのはカウンセリング。
TV局員はストレスを抱えていたり健康不安を抱いていたりする人が多いようで、看護師はその相談にのります。
「セクシャルハラスメント」「パワーハラスメント」などを感じている人はいないか、心が病んでいる人はいないか、と心も含めた相談にのるのです。
医師と相談し、適切な診療が受けられるように指導していきます。
看護師の、もうひとつ大きな仕事は、撮影やロケ現場での“救護待機”です。
番組がTV局内だけで撮影されるわけではありません。
ロケ地へ出向き撮影を行うドラマ、バラエティー、取材などは、危険が伴うこともあります。
そのロケに看護師が同行し、気分が悪くなった人の応急処置を行います。
また、怪我の具合によっては、緊急搬送の手配もします。
ロケに同行したためにTV局の医務室に看護師が居ない、という事がないようにするため、TV局は看護師を多めに採用しているわけです。
ちなみに、ロケ待機の時は、ロケの始まりから終わりまで、現場で待機していなくてはいけません。
早朝から深夜までの仕事になることも。
待機する時間は非常に長いです。
しかし、いつ何が起こるかわかりませんから、緊張感を保ち続けるのは大変な仕事です。
忍耐が必要ですから「TV業界への憧れ」は無くなるかもしれませんね。
TV局の看護師求人は少ないです。
一般企業と違いTV局の数は限られています。
もしあっても、倍率はとても高め。
理由は、退職者が少ないことと、知名度の高い職場だからです。
しかし、まったく無いわけではありません。
求人と出会うタイミングも重要ですから、看護系の転職エージェントに登録し、欠員募集がかかった時にすぐ連絡をもらえるようにしておくと良いでしょう。
求人は非公開の中にあります。
それとは別に、自分で情報収集も行ってください。
TV局のHPをチェックするのがいいと思います。
面接まで進めた時は、看護師として培った知識や技術をアピールしましょう。
また健康相談業務の経験がある人は、それも忘れずに担当者へアピールしてください。
パソコンスキルは必須。
データ管理や書類作成を行うためです。
産業看護師の中でも、TV局はトップといえるほどの高待遇です。
雇用形態は常勤雇用ですが、忙しい時期などに、必要に応じてアルバイト看護師を募集することもあります。
ちなみに、TV局内の医務室勤務は、平日勤務、土・日曜休み、残業なしです。
TV局周辺に住む人々の一般診療も行っています。
【まとめ】
臨床現場で働く看護師は、常に時間に追われた生活をしています。
患者のケアや処置はもちろん、医師の介助、検査、注射、記録など目の回るような忙しさ。
人間関係の悩みを抱えていると「病棟は嫌だ」と感じてしまう人も少なくありません。
それは、あなたの性格が病棟勤務に合わないだけで、仕事ができないという訳ではないのです。
転職して、自分の心と時間を大切にしながら働くという方法もあります。
今回、ここに紹介した5つは、比較的ライフワークバランスがとりやすい仕事です。
しかも、少人数の職場なのでアットホームな雰囲気!
今まで経験してきた技術や知識を使い、新しい環境で働きだすのも良いかもしれません。
ぜひご一考ください!