結婚したり、出産したり、親の介護を担ったり、引っ越ししたり。
新たな生活をスタートさせるとき「臨床から離れた職場で働きたい」「夜勤のない働き方に変えたい」と、転職を考える看護師は大勢います。
今はwithコロナ時代。
看護師の需要は高くなっていますし、少子高齢化、働き方改革が進んだことで、看護師を求める企業が増えています。
そこで今回は、看護師の国家資格を活かして活躍できる仕事を紹介します!
企業は看護師の資格を持っている優秀な人材を探しています。
もしあなたにやる気があるならば、トライしてみてはいかがでしょう。
病院やクリニックなどの医療現場だけが、看護師の働くフィールドではありません。
【一般企業に勤めるメリットは?】
企業で働く看護師を、企業看護師といいます。
大企業や外資系企業をはじめベンチャー企業など、働く職場がいろいろあります。
実は、企業看護師に就きたいと思っている人が多いことを、ご存知ですか?
その理由は、夜勤がなく、規則正しい生活を送れることで心身の健康を管理しやすくなること。
また患者の移動介助やベッド移動などもないので体力的にかなり楽になるからです。
企業は、労働基準法のもと残業時間の削減に努めていたり、福利厚生が充実していたりしますから、就労の安心材料が多いのも魅力。
さらに、企業看護師は1~2人体制が多いので人間関係の煩わしさが少なく、患者の容体が急変という事態や直接の医療行為もほぼありません。
つまりプレッシャーから解放されることも大きな要因といえます。
企業で働く看護師には、どのような仕事があるのでしょうか。
いくつか紹介します。
【産業看護師】
会社員として、企業で働く看護師を「産業看護師」と呼びます。
平たく言えば、企業の医務室の先生。
産業看護師になるための特別な資格は必要なく、看護師の国家資格のみ。
仕事内容は、企業で働く人々の健康管理、健康診断に関するデータ管理、ケガを負ったときなどの応急処置、保健指導、過重労働対策、メンタルヘルス相談などです。
日勤の就労で、夜勤はありません。
原則週休2日。
治療行為が少ない反面、デスクワークが多くなります。
産業看護師はとても人気なので、極めて求人数は少ないです。
採用されるためには、ワードやエクセルなどの基本技術があることは必須。
また産業保健の基礎知識が学べる「第一種衛星管理者免許」や、メンタルケアが重要視されているので「産業カウンセラー」や「メンタルヘルスマネジメント検定」などの資格を持っていると、転職の際に強くアピールできるでしょう。
なお、日本産業衛生学会の産業看護部会が定めた『登録産業保健師』という登録制度があります。
これに登録していないと産業看護の分野で働けないというわけではりません。
これは、すでに働いている産業看護師のスキルや理解力の向上を目指すためにある資格です。
【治験コーディネーター(CRC)】
治験コーディネーターとは、医師と被験者の架け橋になり、治験が円滑に進むように細やかなサポートを行う仕事です。
臨床研究コーディネーターと呼ぶところもあります。
この職に就くための特別な資格は必要ありません。
しかし、実務の中で専門性が問われるため、看護師、臨床検査技師、薬剤師といった医療資格を持っている人や、医療系の知識・医療機関の仕組みを理解している人が治験コーディネーターになっています。
中でも看護師は、コミュニケーション能力が高く、症状に対する知識も豊富なうえ、被験者の些細な変化も見逃さないことから、特に期待されています。
治験コーディネーターの仕事内容は、主に3つ。準備・実施・結果報告です。
準備とは、治験実施計画書を読んで理解を深めることと、医師や看護師へのスケジュール確認や調整を行うことです。
実施とは、被験者の募集やスクリーニング、来院日の調整。
服薬方法などの説明。
被験者の家族から問い合わせや相談があった場合は、各部署のスタッフへ情報を共有して、被験者のフォローを行います。
結果報告とは、治験が終了したら、医師による診察に同席し、被験者の服用状況や副作用などを記録。
報告書を作成・提出して一連の作業を終えることです。
もし有害事象などが生じた場合は、担当医師へ適切な処置を促して報告書を作成。
それを製薬会社や病院に提出します。
この仕事は、被験者やその家族、製薬会社、関係スタッフと、多くの人が関わります。
そのパイプ役が治験コーディネーターですから、高いコミュニケーション能力が求められます。
また倫理観や誠実に仕事をこなす姿勢も大切といえます。
治験コーディネーターになるには2つのパターンがあります。
ひとつは、医療機関に所属して院内の治験コーディネーターとして働く形です。
もうひとつは、SMO(治験施設支援機関)に所属し治験コーディネーターとして医療機関へ派遣される形。
SMOは、治療を行う医療機関と製薬会社の間に入り、さまざまな治験のサポートを担う機関です。
治験コーディネーターの働き方は、被験者の都合に合わせた対応を求められたり、医師との打ち合わせが入ったりするので、多少の残業はあります。
しかし日勤の仕事で夜勤なし、原則週休2日。
出張が必要となる場合もありますが、おおむね規則正しい生活をおくれます。
仕事とプライベートのメリハリがしっかりとれるので人気があります。
求人は、ハローワークや求人誌などにはほとんど載っていなく、看護師専門の転職エージェントなどを使って見つける、医療機関もしくはSMOの知り合いから求人はないか直接尋ねる、という方法がいいでしょう。
ちなみに、ワンランク上の治験コーディネーターになるには「日本SMO協会公認CRC」に合格することです。
受験資格は、2年以上のCRC実務経験があることや、教育研修を受けていることなどの要項があります。
取得できると、給与がアップします。
【臨床開発モニター(CRA)】
臨床開発モニター(CRA)とは、新しい薬を製品化する上で、治験(臨床開発試験)が適切に行われているかモニタリング(監視)する仕事です。
治験の場で、症例データの収集や新捗状況の管理を担います。
安全性や有効性が立証でき、国の承認を得てはじめて薬が患者の元へ届けられます。
ですから臨床開発モニターは、製薬メーカーと医療現場をブリッジする重要な職務といえます。
先の治験コーディネーターは被験者と接しますが、臨床開発モニターは直接被験者とコンタクトを取ることはありません。
臨床開発モニターになるためには、資格は必要ありませんが、転職者は、薬剤師、MR(医薬情報担当者)、看護師、臨床検査技師といった医療系の資格を持っている人がほとんどです。
平日の日中に働き、夜勤なし、原則週休2日、という勤務スタイルが一般的。
薬の知識や臨床の知識を活かしたい人が集まるので、看護師からの転職はやや厳しめかもしれません。
しかし、癌から生活習慣病まで幅広い治験に対応できる知識を持っている点が看護師の強みです。
企業は、将来的に戦力になる資質のある人物を求めていますから、その強みと向上心、そしてパソコンスキルのある看護師は、ぜひ応募してみてください。
大学病院や市民病院といった総合病院の病棟で数年間の臨床経験を積んだ人が、採用されやすいようです。
臨床開発モニターになるには主に2つのパターンがあります。
ひとつは製薬メーカーに就職する形です。
もうひとつは、CRO(開発業務受諾機関)に入社し、医療機関へ派遣される形。
CROは製薬メーカーの治験を受諾・代行する専門企業です。
昔は、薬の開発といえば製薬メーカーで行うのが一般的でしたが、近年は治験のスピードアップやコストダウンを計ることなどからCROが欠かせない存在になっています。
さらに再生医療等製品や新しい医療機器など、治験で必要な製品の開発が活性化しているため、バイオベンチャーや医療機器メーカーでの臨床開発モニターが増えてきています。
【クリニカルスペシャリスト】
医療機器メーカーなどに勤め、医療機器や用具を販売する営業職をクリニカルスペシャリストといいます。
フィールドナース、クリニカルコーディネーターと呼ぶメーカーもあります。
クリニカルスペシャリストとして企業が求める資格は看護師、産業保健師など。
仕事の内容は、医療従事者(看護師、放射線技師、臨床医検査技師、臨床工学技士、視能訓練士、言語聴覚士など)に向け、医療機器の説明やデモストレーションを行ったり、研究会を実施したりします。
企業が看護師を求めるのは、看護師として臨床経験があることと、医療機器を実際に使用してきた経験を活かせるからです。
今までは看護師としての目線で医療機器と接して来たと思いますが、クリニカルスペシャリストは企業側に立ち、医師や看護師への配慮を十分に行いながら、機器の使い方を丁寧に説明します。
デモストレーションでは大勢の前で話すこともあります。
説明がうまくできたから良かった、ではなく営業職なので最終目標は医療機器を「売る」こと。
売上目標達成や利益追求の営業職として医師や看護師と接しなくてはいけません。
その意味で、転職直後は、コミュニケーションの図り方に戸惑うことがあるようです。
クリニカルスペシャリストになるには、医療機器メーカーに就職することですが、すべてのメーカーにクリニカルスペシャリストが配置されているわけではありません。
従って求人はすごく少ないです。
もし、求人を見つけたらすぐに応募するくらいのスピードが必要でしょう。
採用の際に、英語のできる人が優遇される傾向があります。
というのも医療機器は外資が多く、新製品の英語の論文を読む、英語で会議を行うといった業務があるからです。
英語に自信のある人は、その実力をフルに活かせるでしょう。
英語に自信のない人でも、パソコンスキルやプレゼンテーション力、コミュニケーション力があれば、採用者の目に留まる確率があがります。
クリニカルスペシャリストに向いている人は、主体的に動ける人で、目的達成意欲の強い人です。
働き方の基本は日勤で、夜勤なし。基本週休2日。
勉強会を行うときは、医師や看護師の都合に合わせるので勤務時間外になることもありますし、場合によっては出張もあります。
クリニカルスペシャリスト部門のトップにまで上りつめると、海外にある親会社と直接交渉を行うなど活躍の場が広がり、待遇面や報酬面でも大きく変ります。
企業人としてとても魅力のある職種といえるでしょう。
【コールセンター】
お客様が相談してくる悩みや問題を聞き、解決もしくは安心させることがコールセンターで働く人の役割です。
コールセンターといえば、TV通販などで見る商品の電話受付風景を思い出しますが、このコールセンターは通販ではありません。
看護師の資格を持っている能力を発揮してほしいと、企業などが設置したコールセンターです。
詳しく説明します。
◇ 健康相談に応えるコールセンター
自治体や病院、企業などで設置されています。
「赤ちゃんが誤飲した。どのように対処すればいい?」「このような症状が出てきた、何科を受診すべき?」といった日常の相談から、「健康診断で再検査と言われた。今後の生活が心配」といった福祉相談まで、内容は幅広いです。
看護師の経験を活かした対応が望まれます。
◇ 使用の医療機器の動作・故障に応えるコールセンター
医療機器メーカー内に設置されたコールセンター。
自社製品の使い方がわからない、変な音がする、動かないといった疑問や質問に応えます。
扱うのは機器ですから、操作方法の間違いでトラブルは起きやすいもの。
在宅酸素などは命にかかわりますから、丁寧かつ迅速な対応を行います。
故障などのときは、機器に詳しい担当者に取り次ぐなど、臨機応変に対処します。
◇ 製薬会社が運営するコールセンター
薬の飲み方、飲み合わせ、効果などを尋ねられたり、副作用の相談を受けたりします。
薬の名前を全て覚える必要はなく、商品名を相談者にたずね、データベースを用いて素早く対応します。
◇ 保険会社に設置されたコールセンター
保険についての説明ではなく、保険会社の顧客サービスとして「健康相談窓口」を設けている保険会社があります。
名称は「安心サービス」や「医療相談サービス」など異なりますが、すべて健康や病気の相談を受け付けるところです。
看護師としての経験を活かし、専門的な知識を交えて分かりやすく説明します。
いずれのコールセンターに転職したとしても、入社後研修が行われます。
患者が目の前にいなく声だけの応対になりますから、看護時代と勝手が違う、と心得ましょう。
電話をかけてきた人は気が動転していたり、同じことを何度も言ったりする場合があります。
相談相手は不安状態ですから、気持ちをくみ取り、安心していただけるような気配りが必要です。
一方的に文句を並べたてられることも、怒鳴り声でクレームを付けられることもあります。
どう考えても言いがかりとしか思えない状況だったとしても、相手の意見を尊重しながら冷静に応対し、適切な対処の仕方へ話を持っていかなくてはいけません。
間違っても相手を不快にさせたまま終わると、企業イメージに傷をつけてしまいます。
ですから、研修はとても大事といえます。
高齢化が進む日本では、看護師資格を持ったコールセンターの役割が重要になっていきます。
働き方は企業によって異なります。
日勤だけのところや、夜勤対応の2交代制、24時間対応の3交代制のところもあります。
雇用も、正社員、派遣社員、契約社員(パート・バイト)などいろいろです。
また企業によっては「看護師として〇年以上の実務経験者」「週5日のうち2日は夜勤」といった条件が設けられている企業もありますから、求職の際にはソコをしっかり確認しましょう。
コールセンターの業務そのものは資格不要ですが、看護師、保健師、ケアマネージャーといった資格を持っている人は、給与などで優遇される傾向があります。
求人は一般公開されていないことが多く、転職エージェントの非公開求人であることが多いです。
最近は、健康相談ができるアプリなどの登場で、IT企業にもコールセンターが設置され始めました。
健康相談を担うコールセンターのフィールドはさらに広がっていくようです。
ビジネス能力を問われる「コンタクトセンター検定」「CSスペシャリスト検定」「電話応対技能検定(もしもし検定)」といった資格を持っていれば、さらに採用率があがるでしょう。
まとめ
看護師の資格を持っていれば、医療業界内での転職はそれほど難しくはないでしょう。
しかし、転職先が一般企業となると事情はガラリと変わります。
求人数が少ない上に、薬剤師や保健師などの資格を持った人々も転職に参加してくるため、ライバルが多くなります。
合格を勝ち取るには、臨床経験という看護師の強みを活かしながら、パソコンスキル、プレゼンテーションスキル、英語スキル、コミュニケーションスキル、ビジネスマナースキルといった何かしらのスキルをプラスしましょう。
そうすれば、目的の企業に勤めることも夢ではありません。
そのためには、企業転職計画をしっかり立ててください。
転職エージェントに登録したり、有利な資格を取得したり、知人や恩師などから情報を集めるといった地盤を固めましょう。
企業では、努力すれば、その成果は必ず数字として表れます。
実績・功績を上げれば、地位も給与もあがります。
そこが企業看護師としての遣り甲斐の1つになることでしょう!